2021年2月4日木曜日

黒部源流2020…日本最高所の岩魚たち。








自分にとって源流岩魚を追いかけるキッカケとなった魚。


渓流釣りを始めた際に、
とある本で見て読んで知った、黒部源流の岩魚だ。



北アルプス最奥地、
標高2500m付近を流れる黒部源頭。


空が大きく開けた高山帯を流れるそこは、黒部川の最源流域になる。


その美しいロケーションは、
自分の中にあった”岩魚の棲む”源流のイメージとはかけ離れた世界。

こんな場所に岩魚が棲息していること自体、
当時の自分にとっては衝撃的で強烈なインパクトを与えてくれたのだが、
何よりも強く惹かれたのは、そこに棲息する岩魚の魚体のカッコ良さだった。


しかし、当時の自分は林道横の渓流で釣りをしたことがある程度。


完全な登山&山小屋orテント泊スタイルで、
行き帰りの行程も考えると最短で三日は必要になる。

 登山など未経験の自分にとって、
釣り場に辿り着くまでのハードルが高く思えてしまい、なかなか足を踏み出せずにいた。


ロマン溢れる黒部源流の、野性味溢れる岩魚をいつか…


全国各地の源流岩魚を追いかけながらも、
頭の片隅にはいつも黒部の岩魚がチラつく。





今回の黒部源流アタックに挑んだメンバーの一人でもあるミッツ。


昨年度のアオウオの時と同じく、
いつやったか源流の話で盛り上がった時のこと。


黒部源流の話をした際に、


「黒部ですか!?行きましょう!!」


以前から興味があったらしく、即答で話に乗ってくれたミッツ。


アオウオ釣りの時に黒部アタックの作戦会議で盛り上がったっけか…

テント泊での源流アタックの話は聞いていたが、
今回のような登山は経験が無いらしく、彼にとっても大きな挑戦になるようだ。

アウトドアショップに勤務していた経験もあって、
何かわからないことがあればミッツに相談すると、いつも頼もしい答えが返ってくる。

今回の黒部源流アタックにおいても準備~実戦に至るまで、
心強い味方となってくれた。





もう一人のメンバーはお馴染みのいたるさん。


いたるさんと約束したのはかなり前だったな。

源流釣行を始めた頃ぐらいに、
いつか黒部源流のイワナに逢いに行きましょう!


…と、無理やり約束。笑


ヤマト、ゴギ、ナガレモンに…時には海外のコロンビアと、
各地の源流開拓に連れ回し続けた。


いよいよお次は黒部に…


「寒いから嫌や!さては、黒部で俺を殺す気やな!?」


と、嫌がっていたけれど、
根負けして?来てくれることになった。笑



今回の釣りの舞台となる黒部川の最源流域を目指すにあたって、
時期やルート、装備に関して何度も打ち合わせを重ねた。


目指す最源流域は降雪量や気候によって、
タイミングを間違えれば、雪渓に閉ざされてしまっている可能性があるということ。


時期が早く、もし雪渓が残っていれば、
最源流域にて満足に釣りができないかもしれない。

時期が遅ければ、山の気温や気候的に、
行き着くまでの人間にとってのハードルが上がりそうだ。

↑登山に関しては無知&経験が皆無過ぎて、ビビりまくり…


いろいろ考えた結果、8月下旬、
8/24~27の四日間の日程でアタックすることに決定。


ルートに関してはざっくりだが、


新穂高わさび平小屋鏡平山荘双六小屋三俣山荘黒部源頭鷲羽岳


黒部の岩魚釣りと言えば、
赤木沢や薬師沢などで釣りをするのが一般的かな?

今回は最も行きたい最源流域に的を絞った結果、
新穂高から鷲羽岳へ…

裏手から回り込んで黒部源頭に降り立つ。

途中での釣りは一切無しの最源流直行ルートを選ぶことにした。


スケジュールに関しては、

初日は新穂高から双六小屋へ。

二日目に双六小屋から三俣山荘へ。

三日目に黒部源頭で釣りをして、余裕があれば鷲羽岳を登頂。

四日目に三俣山荘から新穂高まで一気に下る予定だ。


出発地点の新穂高から今回の釣りのベースとなる三俣山荘まで、
頑張れば一日で行けなくもない距離なのだが、初登山ということもあって無理は禁物。


自分たちの体力や天候が悪化した時のことも考えて計四日間。

余裕を持たせた日程で挑むことにした。


登山期間中の宿泊について、

コロナの影響もあって今回は全日程をテント泊で考えていた。

今回訪れる立山黒部地域は国立公園に指定されており、
好きな場所で自由にテントを張っての野営は禁止されている。

テント泊の場合、
指定されたテント場敷地内に設営する形になる。

また、山の中での焚火なども禁止。

当然のことだが、
自分たちが出したゴミなどは全て各自で持ち帰りとなる。


テントやマットに寝袋、防寒着や着替えに釣り具、
4日間の食料を50リッターのバックパックに詰め込むと総重量15キロ。


普段の南米・アマゾン旅でも一ヶ月で10キロちょっとなので1.5倍だ…

ちょっと不安になりながらも部屋で背負うとズシリとくる重量感。


無事に辿り着けるだろうか…


どこへ行くときも基本的にクロックスの自分にとって、
履き慣れないトレッキングシューズに対しても不安しかない。


ミッツのアドバイスでトレッキングステッキやハイドレーションも揃えた。


装備やルートのことなど、
ミッツが相談に乗ってくれ計画を立ててくれたおかげで、
不安は楽しみへと変わっていく…


日が経つにつれて不安感はワクワク感へ。

いろいろなことを想うとあまり眠ることができず…


気が付けば当日を迎えていた。





8/24、初日…


5時30分に新穂高センターを出発。

先ずは最初の休憩地点・わさび平小屋を目指す。





のんびり歩くこと1時間半。

7時頃にはわさび平小屋に辿り着いた。









冷えた飲み物などが売られており、
ついつい手が伸びてしまいそうだが、ここは我慢。。


まだまだ先は長いので軽く休憩して出発!





小池新道の脇を流れる蒲田川(神通川水系、高原川の支流)。

今回釣りをする黒部川ではないが、岩魚の魚影もチラホラ確認できた。











わさび平小屋から鏡平山荘までは通常だと3時間半ほど。


秩父沢チボ岩イタドリヶ原シシウドヶ原


なかなかの登りが続く小池新道だが、
休憩を挟みつつ自分たちのペースで登り切った。





お昼頃には鏡平山荘に到着。


雨がパラつき出し、嫌な感じだ…


天候が急変しやすいと聞いていた夏山。

北アルプスの山々を見渡せばどこかで雨が降っている状況で、
覚悟はしていたけれども…


進めば進むほどに雨足は強くなるばかり…

冷たい雨に打たれての修行のような登山が始まった。


とにかく進むしかない。

一歩一歩しっかりと踏みしめながら、歩く、歩く、歩く…


鏡平山荘から双六小屋までは通常で2時間半ほどの道のり。


一服平弓折乗越花見平くろゆりベンチ


展望スポットの多い区間なのだが、
ガスっており真っ白…帰路に期待しつつ、足早に切り抜けた。


そんなこんなで、
なんとか明るいうちに双六小屋へと辿り着いた。


身体は冷え込み、荷物はびしょ濡れ…


雨風の中のテント設営はなかなかにツラかったが、
双六小屋のテン場にて、なんとかテントを張り終えて晩飯タイム。


ミッツが温めてくれたカレーが身に染みる…

暖かい飲み物も淹れてくれ、おかげで体は温まった。


汗拭きシートで全身を拭き、寝袋に潜り込む。

全身の疲労感もあって深い眠りについた。





8/25、二日目…


他の登山者の声で目が覚めた。

明るくなる前からテントを畳み、みんな足早に出発していく。





朝から快晴!!

のんびりと朝ご飯を食べながら、
テントや昨日の雨で濡れた衣類を乾かす。





最後の最後に出発となったけれど、9時30分に双六小屋を出発!


この日は双六小屋から三俣山荘へ。

時間があれば少し釣りも…と、
考えていたけれど、到着時間次第かな。

















双六小屋から三俣山荘までは巻き道を使えば通常2時間半ほど。

それほど距離があるわけでもないが、
写真を撮っていると時間が経つのもあっという間。





途中、寄り道して三俣蓮華岳にも登ってみた。

折角なので三俣蓮華岳の頂から鷲羽岳を見たかったのだけれど、
タイミング的にガスってしまい一瞬しか見えず。。





お昼過ぎには三俣山荘に到着。







昼飯はミッツが持ってきてくれたマルタイ!!

…最高すぎる!!





今日から二日間は三俣山荘のテン場がベースとなる。

釣りするには微妙な時間だったため、
テントを設営して周辺を散策。

写真を撮ったり、明日の準備をしてのんびり過ごす。

晩飯を食べた後は、
星空を眺めたり、釣りの準備をしたり、寝袋の中で休んだり…


各々がそれぞれの時間を過ごす。


いよいよ明日だ…


夢にまで見た、
あの場所で釣りができると思うと興奮で眠れなかった。





8/26、三日目…


ようやく、待ちに待った朝がやってきた。


いよいよ黒部源流での釣り。

この日は時間に余裕があれば、鷲羽岳にも登ろうかと考えていた。


太陽が昇ると同時に谷を下り、黒部源頭へ。





森林限界の一歩手前だろうか。


大きく開けた高山帯を流れる黒部川の最上流域。


今まで巡ってきた源流では見たことのない、
まるで海外を想わせるロケーションに心が躍った。


魚はいるのかな?

水辺に降り立ち、ワクワクしながら放った一投目。


流れ落ちの下にルアーを送り込むと、岩陰からチェイスする黒い影。


食わせるまで至らなかったが、イワナの姿は確認できた。


魚影を確認でき一安心していると、



…グン!!


いつもの感触が伝わり、
水飛沫と共に頬黒のイワナが身を捩じらせる。





このロケーションの中で出逢いたかった!

自分が源流釣行を始めたキッカケでもあり、
長きにわたって憧れた黒部源頭のイワナ。





ミッツとダブルキャッチ!

自分たちにとって至極のイッピキを手にし、ガッツリ握手を交わした。





直後にいたるさんもキャッチ!

全員が魚に出逢え、とりあえずの目標達成かな。

元気よく泳ぎ去る三匹を見送り、細流のさらに上流へ。

黒部源流における岩魚の生息限界地点を目指した。







年間で一体何人の釣り人が立ち入るのだろうか…

全くスレておらず、無邪気に飛び出してくる黒部源頭のイワナ達。

釣れる度に見入ってしまい、なかなか足が進まない…笑





でも、これぐらいが丁度いいんよね。

カッコいい魚体をじっくりと観察させてもらった。





Huerco:XT511-5S
Daiwa:セルテート2004ヴィンテージカスタム
PE0.4号+フロロ6lb+バクシンスナップ#00
Wilderness:HK50S
SMITH:Dインサイト44





ルアーよりもフライやテンカラの方が楽しめるシチュエーション。

つい我慢できずNBに毛鉤を結んでしまった。


それにしてもほんとカッコいい魚だなや…





黒部、一滴の始まり。

黒部源頭…


ここは岩魚にとってまさしく最後の楽園と言えるだろう。


魚信が途絶える最後の流れ落ちまで。

最高のロケーションの中、贅沢な時間を過ごさせてもらった。





夢にまで見た場所。

決して楽な道のりではなかったけれど、足を運んで本当に良かったな。


次はルートを変えて、
再び黒部源頭に戻ってきたいと思う。





黒部源頭での釣りを終えた後は一旦ベースキャンプへ。





三俣山荘謹製!ジビエ丼に鹿肉のしぐれ煮!





冷えた缶ビールと缶サイダーで乾杯!!





「んまーーーーーーい!!」


注文してから後日に家に届くセットやけど、その場で頂いちゃいました。笑


昼食を済ませた後は、最後の目的地・鷲羽岳の山頂を目指した。





鷲羽岳

その名の由来は、
三俣蓮華岳側から見た際に鷲が羽を広げた姿に見えるその姿からきているという。




三俣蓮華岳を背に鷲羽岳に向かって右手には先ほど釣りをした黒部源流。





手前には火山の噴火口跡の鷲羽池。奥にそびえ立つのは槍ヶ岳。





標高2924m。日本百名山の一つ鷲羽岳。


ジワジワくる達成感を胸にその頂へ…

ここまでがほんと長かったよね。


もっと険しい山やハードなルートもあるのだろうけれど、
初登山の自分にとっては刺激的でとても勉強になった今回でした。


今回をキッカケにいろいろな山を登りたくなってきたぞ!!

…まだ当分は魚がいて源流釣りができる場所に限るけどね。笑





8/27、最終日…


最終日は三俣山荘から新穂高まで一気に下る予定だ。


早朝、まだ暗い間から荷物をまとめて下山を開始した。


行きと同様に巻き道から双六小屋まで抜けてもいいのだけれど、
ちょっと寄り道して遠回り。

最後にもう一度、三俣蓮華岳を登って双六岳へ。









じつはまだ達成できていない目標があった。

昔から憧れだった高山を代表する鳥獣類、ライチョウとオコジョを一目見てみたくて…

帰りの道のりで少しでも遭遇する可能性の高いルートを歩く。










しかし、今回はお目にかかることはできなかった。

すれ違った登山者曰く、さっきライチョウを見かけたよ!

と、教えてくれたけれど、見つけることができず…

ミッツは登山中にオコジョを見かけたらしく、羨ましすぎた…


残念やけど、また戻ってくる理由ができたかな。





帰路の途中、立ち寄った双六小屋でちょっぴり贅沢♪

標高2600mで食べるカルビ丼は最高に美味かったな~





最後に鷲羽岳の望む。

戻ってきたい場所がまた一つ増えた。







多少のアップダウンはあるけれど、
ほぼ下りということもあって、行きに比べて帰りはまだ少し楽かな。

途中、雨がパラつきだした場面もあったが、足早に切り抜けてなんとか回避。

小池新道を抜ければラストスパートなのだが、
わさび平小屋を越えた辺りから続く、最後の舗装路がなかなかにツラい…


一歩一歩が足に。。

でも、ここまでくればあと少し…





三俣山荘から丸一日歩いて、新穂高センターに帰着!

成功を祝して、
キンキンに冷えた缶コーラで乾杯!!


…したのはよかったけれど、
駐車場に着いた瞬間、膝から崩れ落ちた。


疲労と無事に帰ってこれたという安心感からかな…??


そこから足がガクガクで立っているのがやっと。。

次の日は飛騨で釣りして帰る予定やったんやけど………うーむ。情けない。。


その後は、新穂高温泉で汗を流して、
大人しく帰宅となりました。





一緒に夢を追いかけてくれる、
最高の仲間がいてくれたからこそ頑張れた今回。

同行してくれたミッツといたるさんに感謝です。

本当にありがとう!!


2021年の渓流解禁まであと少し…

まだまだ行ってみたい源流も沢山あるし、
ヤマトにゴギに、ご無沙汰なナガレモンにも逢いに行かないと!





もちろん、黒部の岩魚たちにもね。